2016年5月7日土曜日

熊本大分地震後の中央構造線や心配される地震について

熊本地震から2週間…GWの「人気観光地」揺れの心配は?

日刊ゲンダイ 4月30日(土)9時26分配信 

 ゴールデンウイークが始まった。最大10日の大型連休。JTBやエイチ・アイ・エスなどによると、今年の人気観光地は〈別表〉の通りだ。

 3月に開業した北海道新幹線による集客と、花見のベストシーズンが重なった北海道や東北が人気。それぞれオープン15周年を迎えた東京ディズニーシーと ユニバーサル・スタジオ・ジャパンもアツい。NHK大河ドラマ「真田丸」や城ブームの影響で、上田城、姫路城、竹田城も注目されている。

■北海道沖で大きな揺れも

 実は地震発生が懸念される観光スポットは少なくない。「特に心配なのが北海道」と警鐘を鳴らすのが、元前橋工科大教授の濱嶌良吉氏(地殻変動解析学)だ。

「日本列島は400年サイクルと1200年サイクルで大地震に襲われていて、ちょうど今、重なる時期なんです。2011年の3・11は三陸沖が震源の貞観 地震(869年)から1200年、慶長三陸地震(1611年)から400年周期に起きた。これに誘発され、ロシア領のカムチャツカ半島周辺で13年以降、 M7~8クラスの地震が頻発し、解放されたエネルギーが日本列島に向かっている。地震は北から南に下がり、東から西に伝う性質がある。北海道沖が震源の大きな揺れが、いつ起こってもおかしくありません」

 もうひとつのキーは、国内最大の活断層「中央構造線断層帯」だ。熊本地震は延長線上の「布田川・日奈久断層帯」が動いて起きた。「中央構造線」に沿って 姫路城と高松城、それに瀬戸内国際芸術祭の会場があり、クロスする「糸魚川―静岡構造線断層帯」と遠くない距離に上田城は建っている。政府の地震調査委員 会は「糸魚川―静岡構造線」で30年以内に地震が発生する確率を「M7.4~7.7、30%」としている。

 熊本地震の発生から2週間が過ぎたが、震度1以上の揺れは1000回を超えた。日本にいる限り、明日は我が身だ。





糸魚川-静岡構造線断層帯は、長野県北部から諏訪湖付近を経由して山梨県南部にかけて延びる活断層帯




1993年(平成5年)7月12日に起きた地震 当時奥尻島に地震計がなかったため震度計測不能




【静岡知事会見抄録】「熊本地震、出来ること全てやる」

産経新聞 5月7日(土)7時55分配信 

 【熊本地震】

 --熊本地震の被災地への今後の支援と、直下型地震に対する本県の対策は

 川勝平太知事「熊本県と静岡県は東日本大震災の数カ月後、防災のための協力協定を結んだ。お互いひとごとではなく、すぐに助け合おうということだ。(大 規模地震は)本県でも起こり得るので、救援の度合いを高めている。実は(被災地の)避難所の状況が劣悪で、仮設住宅の準備が進んでいないと聞いた。本県は 防災先進県であり、日本財団と防災のための協定を結んでいるので、民間と熊本県と本県が一体になり、今できることをしようとしている」

 「本県に直下型の地震が起こることは十分あり得る。それを前提に、昭和54年から今日まで2兆数千億円の地震対策を行ってきた。平成25年度から10年 かけて、被害を8割減らそうと取り組んでいる。今できることは今やっている。同時に、熊本のこともひとごととは思っていないので、できることを全てすると いうのが、静岡県と(県内)市町の姿勢だ」

 --仮設住宅については具体的にどんなアクションを起こすのか

 「実は仮設住宅とは、規則により2年で廃棄するもの。しかし東日本大震災では、一部自治体でこの考えを改め、長く使えるようにして、コミュニティーをつくれる建物を造った。私はこのことを日本財団側に申し上げた」

 「実は、身体障害者や高齢者は、仮設のトイレでは上りづらくてなかなか行けない。だから水を飲まなくなり、エコノミークラス症候群になっている。洋式トイレがいかに大事かということをすぐに分かってもらえないということだ」

 「(日本財団側が)静岡県でモデルを提供する場所がないかとおっしゃるので、とりあえず場所の提供を考えている。仮設住宅のモデルを造りたいとおっしゃるので、人が来やすいように場所を選んで提供する」

 【新耐震基準】

 --熊本地震では、新耐震基準で建設された建物でも被害を受けている。新たな対策は考えているか

 「中央構造線がずれたということなので、ずれたところに建物が建っていれば、どれほど高い耐震性があってもかなわない。自然に対してはやはり謙虚であるべきだ。ただ、今できる備えは全てする。想定内のものに対しては善処する」(4月26日の定例会見)










熊本大地震は「前例」あった “17世紀と酷似する”地震パターンとは〈AERA〉

dot. 5月6日(金)16時0分配信 

 今回の地震について、気象庁は「前例がない」と言った。だが、古文書をひもとけば、今の日本の状況とあまりにも似ている時代があった。我々は歴史に学ぶ必要がある。歴史学者・磯田道史さんに話を聞いた。

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 今回の一連の地震で、震源が熊本から阿蘇、大分と北東方向に100キロを超えて広がっていっていることについて、気象庁は「前例がない」としています が、果たしてそうでしょうか。確かに気象庁が観測を始めた1875年以降では前例はないでしょう。しかし、500年、千年という長いスパンで災害の歴史を 研究してきた私の立場から見ると、前例なしとは言えない。それどころか江戸時代初期の17世紀前半とかなり状況が似ていると考えています。

 順を追って説明しましょう。まず1611年に「慶長の三陸沖地震」が東北地方で起きました。これは東日本大震災と同タイプの東北沖の海溝型巨大地震で、津波による多数の死者が出ました。

 その8年後に、今回と同じ肥後地方で、一つの都市が壊滅するような大地震が起きています。熊本藩の地誌「肥後国志」十四巻には「卯の刻(午前6時)より 大地震い、午の刻(正午)にいたり、城楼崩壊す」とあります。この城楼とは、八代にあった麦島城のことで、最初の地震から数時間、幾度となく襲いかかる激 震で6時間後に櫓(やぐら)などの建物が崩壊してしまったのです。

 さらに「浄信寺興起録」という記録には「大地震動す。山鳴り谷応え」とあります。ゴーゴーと不気味な地鳴りがして、谷でこだまするような状況だったので しょう。城の石垣や櫓が壊れ落ち「死傷するもの無数」、都会だった八代の町が「たちまち荒陵と変ず」とあります。おそらく震度6強ないし7の非常に強い揺 れと余震で、城下は6時間の断続する揺れで消滅したと思われます。

 ちなみに熊本では、記録に残る最も古いものとして、744年、天平時代にも大地震が起きたことがわかっています。今回の地震を起こした布田川(ふたがわ)と日奈久(ひなぐ)の二つの断層帯は数百年単位で激しく動いているのです。

 さらに私が今回、注目したのは当時、豊後(大分県)竹田を治めていた岡藩中川家の「中川史料集」の記述です。八代の麦島城の天守閣が崩壊した同じ日、同 じ午の刻に「岡大地震御城中所々破損」とあります。これは竹田の岡城が地震で崩れ破損したことを意味します。つまり、熊本が揺れ、その6時間後には、大分 竹田の断層も、城を壊すほど激しく動いたのです。今回同様、熊本の地震が大分にまで広がっていた可能性が高いのです。

 東北で震災が起き、その数年後に熊本で都市そのものが壊滅するような地震が起き、その地震が大分にまで広がった。つまり、今回と非常に似通った地震活動が400年前に起きていたとみるのが自然です。

 その後の展開も気になって調べてみると、熊本と大分の地震から6年後の1625年に広島・愛媛・熊本・香川で地震が連発します。広島は、八代、熊本、竹 田を通る断層群の延長線上にあるので、私はこの地震に注目しています。まず同年1月、広島で地震が起き「安芸広島城の石垣・塀・多聞などが崩壊」します。 多聞とは城の細長い櫓で、広島城の地盤はあまり強くないので、震度6ぐらいで石垣や櫓が崩壊したと思われます。城下の被害記録はないのですが、櫓が落ちる かなりの揺れだったことがうかがわれます(「自得公済美録」十七ノ下)。

 同年4月、今度は愛媛を地震が襲いました。「伊予温故録」によれば道後温泉が「地震にて塞」がって「松山城主蒲生忠知命して湯神社に祈祷す」とありま す。7月は再び肥後熊本で大地震が起きています。相当な被害があったようで「丁巳雑録」という史料ではこんな内容が記されています。「(旧暦6月)17日 に揺れ始めて、天守その他城内の建物が崩れ、瓦も飛んで骨組みの木材だけが残った。城中にいた50人ばかりが死んだ。火薬庫が地震で爆発し、跡形もなく吹 き散らした」

 熊本藩細川家の「部分御旧記」には、「本丸には庭がなく四方が高石垣。そのうえ、櫓・天守もなかなか危ない。許可を得て、地震屋(殿様の地震避難舎)を 建てる庭を造らねば、本丸にはいられない」というような記載があり、余震が続いたことがうかがわれます。さらに同年11月上旬には「四国中国大地震」とい う記録が香川県に残っています(「田宮物語」「長尾町史」)。

 つまり「400年前の東日本大震災」のあとには、国内最大級の活断層である「中央構造線断層帯」の西端の熊本・八代でまず地震が起き、大分・広島・愛媛・香川へと西日本の中央構造線を東に向かって、次々と地震が連発した形跡があるのです。

(構成・アエラ編集部)

※AERA  2016年5月2日-9日合併号より抜粋




慶長 1596年から1615年まで 文禄5年1596年大地震が立て続けに起きたことで慶長に改元されたが、慶長年間ではその後も巨大地震が相次いで発生している






注目集める中央構造線 識者「注意が必要」 

 【大分合同・愛媛伊方特別支局】熊 本・大分地震で、西日本を横断する国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が注目されている。震源は熊本の「布田川断層帯」「日奈久断層帯」を中心に、大 分の「別府―万年山断層帯」へと波及したとみられ、その延長線上にあるのが中央構造線だからだ。近くには再稼働が迫る四国電力伊方原発(愛媛県)も立地す る。主な震源は別府市の地下で止まっており、さらに東へと波及する兆候はみられないが、識者は「もしも数カ月か数年の間に別府湾の方で活動が活発化すれ ば、注意が必要だ」と説明する。

7千年の間に5回
 「一連の地震は(断層の)右横ずれ。中央構造線系の活断層が動いたのは明らかだ」。別府湾などで海底の断層調査を手掛けてきた高知大学防災推進センターの岡村真特任教授(地震地質学)は、こう指摘した。
 中央構造線断層帯は紀伊半島から四国の伊予灘へ続く長大な活断層。地質の境界線としての中央構造線はさらに東西に長く、西は伊予灘から別府湾、熊本、八代海へ抜ける。つまり熊本・大分地震は中央構造線の西端が動いたともいえる。
 中央構造線では、過去約7千年の間に少なくとも5回、大地震が起きたとされる。日本の南の海底では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートへ斜めに沈み込んで押しており、そのストレスを解消するため、中央構造線が横ずれを繰り返してきたという。
 最も新しい大地震が、別府湾を震源とする1596年の慶長豊後地震。数日間のうちに中央構造線に沿って伊予(愛媛県)、さらに伏見(京都府)でも地震が起きたという記録が残る。ただ、四国に関してはいつ動いたか、確定的には分かっていないという。
  地震の繰り返しの歴史「地震履歴」を研究している高知大学理学部の松岡裕美准教授(地質学)は「400年前に(伊予が)動いたのなら連動したことになるだ ろうが、動いていなければ、エネルギーをため込んでいるかもしれない。3千年くらいの幅でみれば必ず動くと言えるが、今の科学では、いつ、どのくらいの規 模で動くかは分からない」と話す。

「経験則を外れる」
 熊本・大分地震では、まず4月14日夜に熊本を震源とするマグニチュード (M)6・5、最大震度7の地震が発生。同16日未明にM7・3、最大震度7の地震が発生、阿蘇や大分でも別々の地震が起こり、気象庁は「14日が前震 で、16日が本震」「経験則から外れている」と説明した。
 国内の学者からは「内陸の断層による今回の地震と発生の仕組みは違うものの、東日本大 震災の時も2日前に大きな地震があった。今回、気象庁は14日の地震後に『余震』の見通しを発表したが、16日に本震が起き、自宅に戻っていて犠牲になっ た人もいた。次に何が起きるか分からないのに、東北の反省が生かされなかった」との指摘もある。
 岩手・宮城内陸地震(2008年)などは、活断層が知られていない場所でM7を超える地震が起きた。
 岡村特任教授は話す。
 「日本中、どこでも地震が起きる可能性がある。建物の耐震化や家具の固定など、日頃から被害を軽減する減災が大事。揺れてからでは間に合わない」



※この記事は、5月7日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。 
 





 熊本と大分を中央構造線の西端と考える場合、
中央構造線断層帯(紀伊半島から四国の伊予灘へ続く長大な活断層)に注意が必要

すでに南海トラフに関しては警戒されてきたため、避難訓練が行われてきている 






中央構造線から伊予原発は6から8キロ程度しか離れておらず、四国電力は7月下旬にも3号機を再稼動させたい考え

四国電力では基準地震動(原発の耐震設計の目安となる地震の揺れの強さ)を最大570ガルとして審査を申請したが、規制委員会側は了承せず、最大650ガルに設定しなおした。これとは別に愛媛県は独自の安全対策としておおむね1000ガルにたえられるよう求め、四国電力は対応した

 高知大学防災推進センター岡村真特認教授(地震地質学)「もともと四国電は伊方原発の敷地前綿の断層について、過去1万年は動いた形跡がないとして3号機を建設した。650ガルは中部電力浜岡原発(静岡県)などに比べても低く、中央構造線のゆれを過小評価している。1000ガル、2000ガル以上も当然ありえるものとして想定しなければならない」

高知大学理学部松岡裕美純教授(地質学)「活断層はめったに動かないが何が起こるかわからないのに安全と言い張るのはおかしい」

四国電力によると、伊方原発では14日夜の前震ではゆれを感知せず
16日未明の本震も 10ガルの観測にとどまった。
「新規制基準の適合性審査では、敷地前面の断層54キロだけでなく、別府ー万年山断層帯から紀伊半島まで約480キロの断層が連動して動くケースも想定している」とし、現時点では基準地震動の見直しをする必要はないという

伊方原発をめぐっては松山地裁と広島地裁で運転差し止め訴訟が起きており、ここでも中央構造線による地震の評価が争点のひとつ

2016年5月7日大分合同新聞(朝刊)19面より 


伊方差し止め審尋開始=四国電は却下求める―広島地裁

時事通信 4月28日(木)20時42分配信 

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)は安全性が確保されていないとして、瀬戸内海を挟んだ広島県の住民ら3人が再稼働の差し止めを求めた仮処分申請の第1回審尋が28日、広島地裁(吉岡茂之裁判長)であった。

 四国電は「安全性は十分確保されている」と主張し、却下を求めた。

 伊方3号機は原子力規制委員会の審査に合格し、四国電は7月下旬の再稼働を目指している。

 住民側は終了後、広島市内で記者会見。弁護団の河合弘之弁護士は「広島で原発に対して反対の声を上げたことは、世界に向けてメッセージになる」と話した。




伊方原発を心配しているのは、四国の住民に限らず、海を挟んだ県でも問題になっています
地震があるたびに、伊方原発の状況も伝えられるのはそのためです


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